5.貧困、犯罪、そして自己尊敬―その重大な関係

モンテ・リーチ(ML):
犯罪、とりわけ暴力犯罪は、今日先進諸国全体にわたって確実に増加しつつあり、中でも合衆国において最も暴力的です。この問題に対する伝統的な対処の仕方は、刑務所や警官を増やしたり、禁固の期間を長くしたりすることですが、それは効果があるようには見えません。何故犯罪は増加しているのでしょう、何故人々がそのような行為を犯すのかどのように理解し始めればよいのでしょう。

ベンジャミン・クレーム(BC):
この現象には理由が沢山あります。しかし、最も重要な理由は私達が今宇宙の新しい周期に入りつつあるというものです。新しいエネルギーがその存在を感じさせているのです。とりわけ、今この惑星に充満しつつあるエネルギーが全ての否定的なエネルギーを一掃しているのです。このエネルギーの影響の下でより多くの人々が反逆するようになるでしょう。それは古い習慣や思考方法、つまり過去数世紀にわたって人々の心に強いられた規律が壊されなければならないからです。人々はもう古い強制された解決を受け入れることはないでしょう。

社会全体がこの古い時代の束縛から抜け出そうと試みているのです。犯罪、堕落、麻薬、そして暴力の爆発はこの変化の不可避の序章なのです。それは主に旧市街で起こり、そこではマイトレーヤが“犯罪の燃焼”と呼ぶ現象が起こり、人々は麻薬や、性的暴力、殺人そして他の犯罪にふけっています。この燃焼の過程は汚れを表面に浮かび上がらせ、警察も軍隊も今起きているこの犯罪の爆発を適切にコントロールすることは出来ないとマイトレーヤは言われています。

モンテ・リーチ(ML):
この犯罪の循環を断ち切るために何から始めれば良いのでしょうか。

ベンジャミン・クレーム(BC):
我々はその原因を理解しなければならないと、マイトレーヤは言われます。その問題の領域を犯罪だけに限定することはできません。何故なら、そうする時の解決は単に結果のみに対処するだけの反応的なものになるだろうからと言われます。警察力を増大させたり、刑務所を増やしたり、より多くの人々を刑務所に入れたりすることは原因ではなく結果を扱っているのです。

暴力の起源を理解するためには、人々の生活様式のより詳細な全体像を把握する必要があります。そうすることによってエネルギーの方向を直せるのです。この犯罪は、建設的に方向づけられる必要のある今増大しつつあるエネルギーが間違った方向に向けられた結果なのです。

例えば、自暴自棄から麻薬にふけっている人々に対しては政治家が責任を負っているとマイトレーヤは言われます。人々が麻薬に走るのは霊的飢餓に苦しんでいるからだとも言われます。もし人々が適切な食事も摂れないほど難渋するならば、自暴自棄の生活を送るでしょう。自分の身体を売り、盗みを働き、終に刑務所行きとなるでしょう。もし滋養のある食物を取り上げられ、未来を奪われ、希望が見出せないならば、人々は絶望を忘れるために麻薬に手を出すでしょう。麻薬からは犯罪や殺人でさえもあまり遠くないのです。麻薬に手を出す人々は一般的に最も沢山犯罪を犯しますが、それは麻薬のためのお金を求めて自暴自棄に陥るからです。彼らは全ての抑制を失い、欲する物を手に入れるためにどんな無茶でもするのです。

モンテ・リーチ(ML):
あなたは今新しいエネルギーが世界に流れ込んで来ていて、それは変化を生み出しているが、必ずしも良い方への変化だけではないと言っています。

ベンジャミン・クレーム(BC):
それが主要な理由なのです。これらの変化は長期的に見た場合には良い方へ向かっています。しかし短期的には何世紀にもわたって押さえ込まれ抑圧されて来た全ての腐敗と暴力を表面に浮かび上がらせます。一旦この平衡のエネルギーがそれらを活気づけると、抑制は攻撃となり、この分離分裂した社会の中では犯罪と暴力の増加へと導きます。犯罪は極端な裕福と極端な貧困が隣り合わせに存在する時に起こります。より公正な社会では犯罪は減少するでしょう。

モンテ・リーチ(ML):
あなたは麻薬の常習と犯罪との関係について話しました。最近の研究でヘロイン中毒者は麻薬を使用しない犯罪者の15~20倍強盗事件を起こすことが判ってきました。また、合衆国の刑務所にいる人々のおよそ70パーセントが麻薬を濫用していると報告されています。

ベンジャミン・クレーム(BC):
麻薬は行動様式の枠組をゆるめます。麻薬常習者は自暴自棄になり抑制の間隔を全て失います。彼らは‘一服’のためにお金が必要なのです。普通の犯罪者はたいがい玄人として仕事をします。刑務所に行かずにすむ限界を心得ているのです。しかし麻薬常習者はバランス感覚を欠いています。そのために逮捕を免れる専門知識も持たないので、必然的に刑務所行きとなるのです。

モンテ・リーチ(ML):
麻薬に手を出す人々に言及した時“霊的飢餓”とマイトレーヤが言われたのはどういう意味か説明して頂けますか。そしてその飢餓は如何にすれば治るのでしょうか。

ベンジャミン・クレーム(BC):
霊的飢餓は自己疎外の非常に極端な形です。人々は自分が誰かを知りません。それゆえ人生が全く無目的になるのです。人々は人生を終わりにしたいと欲し、麻薬に手を出して緩慢な自殺を決行するのです。

もしあなたが荒涼とした環境の街に住み仕事もなく、成功の見込みもない非常に不利な状態に置かれた人々に目的や希望のない将来を示すならば、彼らはどんな仕事も避けるようになり、その結果生きるために犯罪を犯すか諦めて麻薬に手を出すようになるでしょう。しかし麻薬を手に入れるためにはお金が必要です。悪循環となるのです。

麻薬常習者は心の中で人生と絶縁しています。彼は降参してしまったのです。希望を取り戻す方法は人生に意味を取り戻すことです。自分自身に対する新しい見方、自分自身に価値があるという感覚を持たなければなりません。まず第一に彼が自己尊敬の念を高めるのを助けることです。自分に対する尊敬は徐々に自己認識となり、マイトレーヤによれば、やがて人生の目的である自己実現をもたらします。人々が自分自身に気付かなければ、自分を無用で、無価値で、無力で社会に居場所が無いと考えるならば、自殺を決行するというのは避けられない結果なのです、すぐに死ぬか麻薬の濫用によってゆっくり死ぬかは別にして。

麻薬常習者を刑務所に入れたり、法規を強化したり、特定のイデオロギーや宗教を説教して矯正するというやり方でこの問題を解決することは出来ません。売春婦や強盗に説教をしても彼らはあなたの言葉を主義として拒絶してしまうだろうと、マイトレーヤは言われます。しかしもしあなたが、「売春であれ、盗みであれ、麻薬であれ今あなたが何をしていようとも、自分自身でありなさい、正直でありなさい、誠実でありなさい、無執着でありなさい」と言うならば、人は自分自身をあるがままに経験でき、マイトレーヤが“内なる観察者”と呼ぶものを感知することが出来るでしょう。内なる観察者は制限された有限の人格ではありません。それは無限です。人はそれを神性と呼びます。人は自分自身を無限の神性として経験する時、自己尊敬を成長させます。こうして人は犯罪と麻薬常習の悪循環から抜け出すことが出来るのです。

モンテ・リーチ(ML):
最近ニューヨークタイムズの記事でリッカーズアイランドに在るニューヨーク市立刑務所での麻薬からのリハビリテーション努力についての報告を読みました。この努力は麻薬の常習だけでなく、犯罪や暴力を抑制するのにも非常に効果があることが証明されています。これは広い範囲で効果的だとあなたが思われる方法の模範になるでしょうか。

ベンジャミン・クレーム(BC):
刑務所という環境の中では全くその通りです。マイトレーヤは、個人の内的世界、つまり、自己疎外感に対処する唯一の効果的な方法はその環境を通してであると言っています。刑務所にいるのなら刑務所の環境を扱うべきです。外の世間にいるのなら、住んでいる都市の環境が対象となります。

マイトレーヤによれば、環境の力を通してこそ自己認識が創られます。例えば、人は教会の中に入ると静けさや平安を感じます。真我はこれを体験します。すると心はもはや混乱や騒動の中にはいなくなります。しかし旧市街にある廃れた住居の荒れた陰鬱な状況に住んでいると、人の心は絶望し、逃避するために麻薬に手を出すでしょう。環境にストレスや緊張がなければ麻薬は不用です。マイトレーヤは人の身体の中には人類に知られている最も強力な薬・・無執着・・があると言っています。無執着は穏やかで清潔で平和な環境の中でしか現れることは出来ません。

ニューヨーク刑務所の試みでは、彼らは環境を変えました。例えば囚人達は寮に住んでいます。隔離された独房ではないのです。また動き回ることが出来ます。洋服も普通のものです。彼らは互いに話かけることができ、お互いの考えを交換することも出来ます。彼らは非常に広い意味でのある種のグループコミニュケーションを持っています。それはひとつのグループ療法で、そこでは自分たちの問題を個人として又グループとして話し合うことが出来ます。そしてこういう方法で自分たち自身を回復することが出来ます。日々自己尊重・自己尊敬を育てているので彼らは自己認識を培います。これは確かに前進の道です。

モンテ・リーチ(ML):
あなたが話されていたような自己尊敬と自己認識を達成するためにマイトレーヤがある人達を指導しているということですが。

ベンジャミン・クレーム(BC):
はい。私が理解している限り、ロンドンで、マイトレーヤはインドから来た聖人つまりスワミ達の集団を教え、訓練しています。そして彼らは崩壊した家庭の若者や難民、麻薬とアルコール中毒と犯罪の環に掴まった人々のグループをつくっています。そういう人々は自分を尊敬することを教えられています。その過程の一時点で彼らは簡単な呼吸法を与えられています。その呼吸法を通してマイトレーヤは一瞬の間彼らに真我としての自分自身を体験させることが出来ます。この自分自身が真我、観察者であるという感覚が彼らを徐々に麻薬常習者の状態から自由にします。彼らは自己尊敬を獲得し、そして麻薬常習者と犯罪と疎外のはてしなくみえる悪循環から抜け出すために自分から努力するようになるのです。このプログラムは英国で徐々に実施されつつあります。

モンテ・リーチ(ML):
あなたは貧困について話してきました。貧困が犯罪と麻薬濫用の循環に対してどんな役割を果たすか説明願えますか。

ベンジャミン・クレーム(BC):
貧困は犯罪の発生の増加において主要な因子の一つだと確信しています。この増加は先進諸国の最も豊かな国々で起こっています。これは偶然ではありません。富は自己満足をもたらす傾向がありますが、マイトレーヤはこれを全ての悪の根源と呼んでいます。分離が妬みを生じさせ、それゆえ犯罪を引き起こします。

現代の富は主に発展諸国全体を支配している市場のフォースの作用を通してもたらされていました。それは我々全員が平等な地点から出発するという偽りの前提に基づいています。勿論、誰も同じ地点から出発してはいません。市場のフォースは多数の人がより貧しくなるという犠牲の上に少数の人が非常に裕福になるのを助けます。これは今世界中で起こっています。極貧状態で生き、飢えて絶望している人々の数は増加しています。それにもかかわらず先進世界中の全ての国で大富豪も増えています。市場のフォースは社会の一部分を他から切り離すので必然的に分離的です。こういう理由でマイトレーヤは市場のフォースを悪のフォースと呼ぶのです。

これが犯罪の循環を創り出し、それゆえ刑務所が唯一の選択肢とならざるを得ないのです。そして、実際に現在暴力的で危険な犯罪者たちに対しての唯一の選択肢は刑務所しかありません。刑務所の囚人数は増加し続けていますが、囚人達が反抗しているのでもうこれ以上収容出来ないという限度まで達しています。また彼らがしているのは新しい平衡のエネルギーへの反応でもあります。彼らは自分達をおとなしくさせるためのおびただしい法律や規則の押しつけに我慢をしなくなるでしょう。

逆説的ですが、市場のフォースの自由な振る舞いに基づいた社会を創ることは、“営業効率”を確保する為に経済全体にわたって非常に厳しい統制がなければなりません。これを商業主義の‘毒’とマイトレーヤは呼んでいます。それは社会の自然な要求に制約を押しつけます。社会の要求を政治家が満たさない時、人々は反抗します。人々の声が聞きとどけられない時、大変革は避けられません。この大変革の一部が犯罪の発生の増加なのです。

モンテ・リーチ(ML):
1992年のロスアンジェルス暴動のような抗議の罪は正当化される事がありますか。

ベンジャミン・クレーム(BC):
あれは理解出来ます。また不可避のことでもあります。大きなスケールで不公正があれば直ちに暴力が燃え上がります。それはいつでも起こってきましたし、人々が抑制を失い、麻薬の濫用が増え、麻薬の影響下にある人々が抗議に参加するにつれて、より激しく暴力的に発生するでしょう。しかし暴力的な抗議は麻薬常習の結果ではありません。それはあまりにも巨大な富とあまりにも著しい貧困が隣り合わせに存在するという, この社会のアンバランスの結果なのです。この問題に対する唯一の答は分かち合いの原則を実行することです。このゆえにマイトレーヤは分かち合いの原則を社会の変化について話されるあらゆることの道標として掲げられたのです。

市場のフォースに基づいた商業主義は今や世界の全ての国を支配しています。西洋諸国はこの制度を旧ソ連邦に薦めてさえいます。しかし旧ソ連邦でもこの制度は世界の他の国同様うまくいかないでしょう。市場のフォースに分はあります。しかし盲目的に従うならば、市場のフォースは現在の社会とその経済制度を崩壊の淵に引っ張っていくでしょう。

マイトレーヤは日本から始まる世界の株式市場の崩壊を予告しました。それは必ず破裂するバブルで、この堕落した経済制度の終焉をもたらします。新しい政治は資本主義や共産主義のような極端なものは含まないとマイトレーヤは言っています。人々はもう自分たちの生活や社会的志向に対する解答として‘特定の主義主張’を認めないでしょう。生活の再生は全ての分野での自由の制度化を通してもたらされるでしょう。

私たちは幾世代も続いてきた三つの全体主義の終焉を目撃しています。政治的全体主義は、主に旧ソ連邦と中国で実証されましたが、いわゆる共産主義体制と呼ばれています。経済的全体主義は、今日西側諸国、アメリカとそのヨーロッパ同盟諸国と日本で実証されており、これは、旧ソ連邦と中国の政治的全体主義と同様なきびしい統制を人々の生活に強いています。そして最後に打ち壊されるのが宗教的全体主義です。これはヴァチカン、イスラム教の原理主義的司令官達、キリスト教の伝統信奉主義者達に最もよくあらわれており、さらにはこれまで寛容で、心の開いていると言われていたヒンズー教や仏教においてさえも見られます。宗教界全体が人々の生活をさらに強く支配する方向に今動いています。宗教的全体主義はいまや力の絶頂に達しつつありますが、やがて政治的全体主義と経済的全体主義の例に習い過去のものとなるでしょう。全ての人の内なる神性の認知に基づく真に自由な社会の創造を通して、やがて政治の、経済の、そして宗教の三つの前線全てに新しい自由が、その姿を現すでしょう。

モンテ・リーチ(ML):
私たちはこれまで犯罪と麻薬常習について経済的、社会的観点から話してきました。しかし人々が麻薬に手を出し犯罪を犯すには個人的、霊的な理由もあります。容易な解決はないように聞こえます。おそらく経済の再編と該当者への個人的霊的カウンセリングの組合せが役に立つでしょう。

ベンジャミン・クレーム(BC):
それは答えの一部です。新しい平衡のエネルギーが世界に放出されており、このエネルギーが負のフォースを中和することを忘れてはなりません。世界の一般的な緊張が減少し始めるとき、分かち合いの原則が多様な社会的、政治的再編を通して実行され始める時、人々の危機感は減』り、犯罪も減少するでしょう。