前ユニセフ理事長ジェームズ・グラント氏とのインタビュー

SI誌1990年5月号より

「世界の子供たちの希望の季節」

聞き手:モンテ・リーチ

「各国の政府は子供たちの福祉にますます注目を注ぐようになるだろう」と、マイトレーヤは最近、彼の側近に伝えた(シェア・インターナショナル誌1990年1/2月合併号)。世界の出来事は既にこれを確証する過程にあるように思われる。
 昨年11月の国連総会において、児童の権利に関する協定の採択を初めとして、先月のタイ国における、教育問題でこれまでに開催された最大の集まりである「全員のための教育」の会議や、9月にニューヨークで予定されている「子供たちのための世界サミット」に至るまで、子供たちの窮状が世界の舞台において、かつてないほど深刻に取り上げられつつある。子供たちに向かってのこの移行の背後で働いていた主要な力は、ユニセフとその理事長であるジェームズ・グラント氏であった。
 10年間、グラント氏は、免疫キャンペーンと挨拶カードの販売で世界中に名の知られたこのグループの先頭に立ってきた。ユニセフは大衆に人気があるだけでなく、子供たちのために類いまれなその努力を常に賞賛する東側と西側両陣営の政治家たちにも人気がある。
 シェア・インターナショナル誌通信員であるモンテ・リーチは、最近グラント氏にインタビューした。


シェア・インターナショナル誌(SI):90年代に入るにあたって、最近の子供たちへの国際的な決意と、前の10年間の初めの頃の決意をどのように比較されますか。

ジェームズ・グラント(JG):今年はもし、1980年代だったら、10年間でもたらすにはほとんど奇跡に近いといったようなことがたくさん起こりました。一つの例は世界的な児童の免疫です。1980年代にこれを始めた時、毎年450万人の子供たちがワクチンで予防できる病気で亡くなっていました。現在1990年代の終わりまでに、そのような子供たちのうちの300万人以上が救われるでしょう。第二に、児童の権利に関する会議です。私は覚えていますが、それが1979年に提案された時、これは私が在職している間には決して実現しないだろうと心の中で思ったものです。ご承知のように、それは去年の11月に国連総会で採択されたのです。「子供たちのための世界サミット」はもう一つの例であることは確かです―それは、たぶんその中に合衆国とソ連の大統領を含んだ世界のトップの指導者たちが子供たちのために集まって来るという考えです。より狭い水準では、ユニセフの予算の規模は過去10年間で事実上2倍以上になっています。明らかに、この10年で子供たちに対する国際的な傾倒は急カーブで増大してきました。

SI:80年代の間、ユニセフの一般的な活動方法はどのように変化してきましたか。

JG:それ自体が目標であるところの個々の良い企画の実施を支援することから、もっと広範囲の活動方法に強調を置くことに移ってきました。今日では、私どもはユニセフの基金はバケツの中の一滴の水にすぎないことをこれまで以上に意識しています。7億ドルは大金のように見えますし、確かに大金ですが、数兆ドルの世界では、もし数億人の貧しい子供たちと彼らの直接の家族の生活環境を少しでも改善したいと思うならば、政治を変え、もっと大規模に他の人々の人的資源を動員することによって、これをしなければならないということは明らかです。

この主要な例は、世界児童免疫企画でしょう。私どもはこの計画において、各国の厚生省を援助することに置かれた焦点を、特定の国での免疫や、各国が一定の時間枠内でこれまで手の届かなかった人々にも届くことができるような、免疫の目標を採用するように促すことに焦点を移しました。そして目標を設定するだけでなく、これまでよりも遥かに多くの現存している資金と人的な資源をそれに加えて動員しました。例えば、教区の司祭たち、テレビとラジオの放送局も免疫に焦点を合わせるようにして頂きました。

SI:さまざまな資源を動員すると言えば、ユニセフは9月に子供たちのための世界的規模のサミットを予定していますね。なぜ子供たちのためのサミットなのですか。

JG:免疫と経口補給療法とその他の技術に関してめざましい発展を遂げた後でさえ、今日一日だけで世界中で8,000人の子供たちが50セントのワクチンを施されていなかったために死にました。子供たちの両親が経口補給療法を知らなかったために、さらに7,000人の子供たちが死にました。地方の当局が急性肺炎を鎮めるために1ドルの値段の抗生物質を使うことを知らなかったために、さらに7,000人の子供たちが死にました。

あなたが、どうしてこれらの国家の指導者たちが集まる準備をしているのかと尋ねるならば、(それは毎日死んでいる40,000人の子供たちの中の25,000人の子供たちは非常に簡単に予防できる無知という原因に対し、社会が人々に知識を得させるように動員しさえするならば)廉価で簡単に予防できる原因で亡くなっているからだと答えます。

サミットそのものは、各国の首脳が両方に参加できるように、国連総会の開催日と同じ時期である9月29〜30日に、ニューヨークの国連本部で開催されるでしょう。サミットの主要な焦点は、90年代に、たやすく実行できることをなすということでしょう。それを劇的に表現する一つの方法は、次のように言うことです。すなわち、もし現在の幼児死亡率が1990年代も継続するようならば、1億5,000万人の子供たちが死ぬでしょう、と。そのうちの1億人の死が容易に防止することができるとするならば、2,000年までに幼児死亡率を半分に引き下げることができるはずです。もし私どもがそのような目標を達成することができるならば、5,000万人の子供たちの命が助かります。もちろん、これは人口問題に大きな影響を与えることになるでしょう。出生率を引き下げる主要な鍵は、子供たちが生き延びる信頼性が高いことでありますから。

第二に、サミットは子供の権利に関する協定に注目を引き寄せるでしょう。協定は20ヵ国がそれを批准するまではいかなる実効力も持つことになりません。そうなった時でさえ、それを批准した国々をカバーするだけです。ですから、サミットがこの協定により多くの注目を引きつけることを期待しています。

これと密接に結びついて、サミットが90年代には子供たちにますます大きく焦点を当てるように、一般的な呼びかけを行って終幕することを期待しています。良い時代であろうが悪かろうが、子供たちが生き延びること、保護されること、そして幼児期の成長と教育に不可欠なものを確保することが第一に必要であることを、私たちは認識すべきです。これがたぶんサミットの最も重要な目標です。――すなわち、子供たちの生存と福祉という必要事項をめざす新しい気風を発達させることです。

SI:あなたは、ブッシュ大統領とゴルバチョフ大統領も出席するかもしれないとおっしゃいました。

JG:企画委員会には現在22ヵ国が参加しています。合衆国とソ連は、この委員会の積極的メンバーです。彼らの国の大統領が出席するという最終的口約束こそしていませんが、これは非常に上向きの徴候です。

SI:この会議は前例のない出来事となるでしょうね。

JG:東西南北のサミットが行われることは史上初めてのことになるでしょう。そのようなサミットを、子供を議題にして行うということは、それは偉大なる前進の一歩となると私は考えています。

SI:子供たちと関連して、南北間の経済的正義の問題は明らかに最重要事項となっています。それに関するあなたのご意見は?

JG:10年前には、正味400億ドルが北側から南側へ流れていました。今日では、それが逆向きになっています。第三世界が年間約400億ドルに見合う資金供給を西側の工業国に行っているというのは、全く不条理なことです。もし私たちが次の世代の地球的問題―環境、麻薬、テロの諸問題―にうまく対処しようとするならば、世界により大きな経済的正義が必要であると世界の大衆と指導者たちを納得させることが近い将来できるように期待しています。経済的正義の問題に直面することなしに、それらの諸問題に対処することはできません。

SI:1990年度「世界の子供たちの状態」は、次の10年以内に絶対的な貧困を根こそぎにするためには毎年500億ドル(約70兆円)が必要になるだろうと述べています。しかし、たとえお金が入手できても世界中に絶対的貧困の問題に対処するための一貫した計画はありますか。

JG:詳しい計画はまだつくられていません。しかし私どもは、貧困の最悪の様相を取り除くにはどのように着手すべきかを基本的には知っています。水と衛生設備を人口の大多数にどのようにしてもたらすかを今日では知っています。初歩的保健衛生を追求する最善の方法を知っています。教育の分野では、タイ国での会議は一貫した計画のためのさまざまな要素を生み出すように計画されました。90年代に普遍的初等教育を達成するためには400億ドルから500億ドルの追加予算が必要となるという見積もりがあります。間もなく国際的な開発戦略の計画についての国連会議があります。これはさらに秋の国連総会で検討されるでしょう。そのような計画を遂行しようとする一致した意志があるものとして、これらはすべてその広大な輪郭を統一することに貢献するでしょう。それはもちろん今なお大きな問題です。


<子供の権利に関する協定採択された協定の目立ったもののいくつかを要約の形で次に掲げる>

◆子供とは、もし国の法律がそれよりも若い年齢で成年と定めていなければ、18歳未満のものと定められる。 ◆すべての子供は固有の生存権を有する。各国は子供の生存と発達を最大限に保障すべきである。 ◆すべての子供は生まれながら名前と国籍を持つ権利を有する。 ◆裁判所や児童福祉の省庁や政府が子供たちを取り扱う時は、子供の最大の利益が第一に考慮されなければならない。子供の意見には注意深い考慮が払われるべきである。 ◆国家は一人ひとりの子供がいかなる種類の差別や区別もなく、完全なる権利を享受できるように保障すべきである。 ◆子供たちは、もし子供たちの福祉のために能力のある権威筋によるのでなければ、彼らの両親から別れさせられるべきではない。国家は国境を越えて出たり入ったりすることを許可することによって、各家族の再会に便宜を図るべきである。 ◆両親は子供の成長に第一の責任を有するが、各国は父母に適切な援助を供給し、児童福祉子供の権利に関する協定施設を発展させるべきである。 ◆国家は子供たちを性的悪影響や性的搾取を含める肉体的精神的危害や放任から保護すべきである。 ◆国家は親のいない子供たちに、適切なそれに代わる世話を提供すべきである。養子制度は注意深く立法化されるべきであり、もし養父母が子供をその誕生国から移動させるときには、保護を提供し、法的正当性を確保するように国際的な合意が求められるべきである。 ◆身体障害児は特別の取扱と教育と世話を受ける権利を有する。 ◆児童は達成し得る最高水準の健康状態を持つ資格を有する。国家は免疫や健康教育や幼児死亡率の減少に力点を置きつつ、厚生福祉がすべての子供たちに与えられることを保障すべきである。 ◆初等教育は無償でなされるべきであり、義務教育は可能な限り早い時期からなされるべきである。規律は児童の尊厳を尊重しなければならない。教育は、理解と平和と寛容の精神で児童に人生の準備をさせるものである。 ◆子供たちは休養し遊ぶ時間と、同等の文化活動と芸術活動の機会を持つべきである。 ◆国家は児童を経済的搾取や、教育を妨げたり、健康と福祉の害となるような労働から保護すべきである。 ◆国家は子供たちが麻薬の不正使用と麻薬の製造や不正取引に関わらないように保護すべきである。児童誘拐と児童の不正取引をなくすようにあらゆる努力がなされるべきである。 ◆18歳未満で犯された犯罪に対して死刑や終身刑を課すべきではない。少年院の児童は大人と分離させられるべきである。彼らは拷問されたり、残虐な取り扱いや品位を下げるような取り扱いを受けてはならない。 ◆いかなる児童も戦闘に参加してはならない。武力闘争にさらされた児童は特別の保護を受けなければならない。 ◆少数民族の子供たちと土着民は制限を受けることなく、彼ら自身の文化と宗教と言語を享受すべきである。 ◆不適切な扱いを受けたり無視されたり監禁されたりした子供たちは、適切な取り扱いと回復と社会復帰のための訓練を受けるべきである。

SI:先進国に住んでいて、この過程に貢献し、ユニセフが関わっている大義に援助の手を差しのべたいと思う人にどんなことを勧めますか。

JG:私自身の忠告は、人々は一連の相互補完的な戦線で行動すべきだというものです。第一のものは個人的模範です。合衆国で子供を母乳で育てる母親は、すべて第三世界の人々に模範を作っていることになります。第三世界の人々の子育ての現在のやり方を方向転換させるための最も説得力のある議論は、次のように言うことです。すなわち、例えば、アメリカ合衆国では母乳で育てる母親が20%以下だったのが、この20年間に50%以上に増えたと言うことです。西洋の地位的象徴は大変重要です。下痢症状のある子供を持つ親が、アメリカ人の医者に「私の子供に経口補給療法をやってみてはどうでしょうか」と尋ねる時にも同じことが言えます。アメリカ人の医者は、あまり効果のない点滴の方法から経口補給療法に移行することが大変遅れていました。第三世界で彼らは経口補給療法をもっと利用すべきだという議論を私どもがする時、彼らの最初の質問は、「アメリカでは何が行われているのですか」というものです。現時点ではアメリカの先進的な病院では同じことを行っていますが、大部分のアメリカの医者はまだ変更はしていません。

第二に、私たち自身の社会で子供たちにもっと注目を払うように要求すべきです。子供たちに対して、アメリカで曖昧な無視があるということが明らかであるならば、開発途上国の人々に彼らの子供たちにもっと注意を払うように説得することは大変難しいのです。これをする多くの方法があります。世界サミットと平行して、地域毎のサミットを開催することを私どもは望んでいます。ニューヨーク市は、世界サミットと同じ頃に子供たちについての市独自のサミットを開催する可能性があります。もしニューヨーク市がそうするつもりならば、リオディジャネイロやカルカッタやそのような都市に非常に強力な影響を与えるでしょう。

第三に、もちろん、財政的な援助はいつでも助けとなります―子供たちを救う運動、教会の援助、オックスファム、ユニセフ発行の挨拶カードなどです。そして第四に、議会や政府に圧力をかけて、発展援助を増大させること、子供の権利に関する協定に基づいて早く行動を起こすこと、世界サミットやそのようなもののための援助をするように促すことです。

SI:最後に、過去を振り返って見て、1980年代において何がユニセフの最も有意義な事業だったと思われますか。

JG:それはまず第一に、政治家たちと一般大衆の議題のずっと上位に子供たちを置いたことです。第二に、保健衛生や教育の分野の人々に影響を与えて、彼らが最も困窮している人々の手に届く、より費用効率の高い手段を提案したり、支援するようにしてきたことであると申し上げたい。それは、ゴビ(GOBI)―すなわち、成長監視(Growth monitoring)、経口補給(Oral rehydration)、母乳保育(Brest feeding, nutrition)、そして免疫(Immunization)の頭文字と呼び慣らわされていることに強調を置いた、子供たちの生存と発展革命でしょう。

要するに、いろいろな問題が残っていますが、今は子供たちの健康にとって、ほとんど春のような時期となっています。世界中の大地に進歩という、わずかな緑の新芽が芽吹きつつあるのが観察できます。 
 
 
 
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シェア・インターナショナル誌 最新号: 2006年4月号の記事より

過去シェア・インターナショナル誌に掲載された方々のインタビュー記事の一例


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