合衆国下院議員デニス・クシニッチ氏とのインタビュー
SI誌2003年8月号より
「平和は可能であり、平和は必然である」
聞き手:モンテ・リーチ
オハイオ州選出の民主党員、デニス・クシニッチ合衆国下院議員が初めて全国的に有名になったのは、1977年に彼が31歳でクリーブランド市長に選ばれたときであった。それはアメリカの主要都市の首長としては史上最年少だった。1978年に、クリーブランド市の銀行は、市政府への貸付拡大の条件として、市が所有していた電力事業を民間企業に売却することを要求した。クシニッチ氏は売却を拒み、アメリカ政治史上前例のないことに、クリーブランド市の銀行は、わずか1,500万ドルのために市をデフォルト(債務不履行)に追い込んだ。クシニッチ氏は1979年に再選を果たすことはできなかったが、その15年後に、市民のほとんど半数に低料金の電力を提供しているクリーブランド市の電力事業の拡大が力となって、オハイオ州の上院議員に選ばれた。1998年には、クリーブランド市協議会は「市営電力事業を売却することを拒んだ勇気と洞察力の持ち主」として彼を表彰した。
合衆国下院議員として、クシニッチ氏は2003年のイラク戦争への議会による反対を主導した。アメリカ大統領選に向けた現在のキャンペーンの中で、彼は力強い行動主義と、生きとし生けるものの本質的な相互依存性についての霊的感覚を組み合わせている。それと共に、クシニッチ氏の世界観は、公共サービス、平和、人権、環境への情熱的な活動と結び付いている。
シェア・インターナショナル誌(以下SI):平和と正義の問題は、あなたの大統領選キャンペーンとあなたの政治的手法全体の中心になっています。あなたがこれらの領域に焦点を当てることを選んだ理由は何ですか。
デニス・クシニッチ氏:私たちは皆、私たちが生きている社会を肯定することにつながる人生の目的を持っています。それには様々な方法があります。医師になる人もあり、法律家、建築家、教師、母親、父親、自治体職員、パン屋、ウエイターになる人もいます。私たちは皆、それぞれの居場所を持ち、より多くの可能性を目指しています。私自身について言えば、私は若い頃から社会的、経済的正義へのコミットメントを感じてきました。私たちが自分自身の人生の中に投影された人生の可能性を見るとき、外的世界における平和の追求には、人の内的世界における平和の追求が先立たなければなりません。私自身の人生においてそのような活動の機会を持ったことから、私たちがそれに向けて働くならば、平和は可能であり、必然であると私は理解しています。
自分自身の経験に関して誰もが行っているように、私の理解、学びを分かち合うことは、大きな喜びです。私たち自身の政府機構の中でそれに向けて働くことは、私が担ってきた重要な責任です。なぜなら私は、私たちはもっと平和的な社会をつくり上げることができ、平和と正義は確かに共に歩むことができると信じているからです。私のコミットメントは、目的の理解と、一人の人間が違いをもたらすことができ、各人が確かに違いをもたらすことができるという信念から来ています。各人は、自分の生活の中で、私たちの人間的可能性を拡大するために何ができるかを慎重に考えるべきです。私たち各人が自分の生活の中で、日々、より向上し、より多くの可能性を開発し、より多くの愛を世界に送り、私たちの才能と能力を毎瞬ごとに実らせるために何ができるかを考えるべきです。世界にはそのような創造性の可能性はあります。それはすべて私たちの内側から始まります。私たちは自分自身を信頼し、違いをもたらす能力を信じなければなりません。
SI:すでに幾つか述べられましたが、人生や政治に対するあなたのアプローチを導く霊的、宗教的理想や原則はあるのですか。
クシニッチ氏:私の世界観はホリスティック(全体的)なものです。私は世界を相互に関連し相互に依存したものと見なしています。すべてのものは、強力な内在するリアリティを通してそのアイデンティティーを表現する方法を持っています。一人ひとりが選択を行えば、その選択は世界に影響を与えます。それから私たちは各個人の持つ力を認識し、私たちの存在の途方もない表現性と潜在性に気づきます。私の人生と活動を活気づけている原則は、全人類の本質的な相互関連性についてのこの理解に関わっているに違いありません。従って、私たちは自分の選択によって他人に影響を与えていることに気づくべきです。私たちは他の人々に影響を与えるだけでなく、他の種にも影響を与えます。ですから私たちは、この惑星とこの惑星の生活に参加しているすべてのものに敬意を払わねばなりません。
SI:あなたはどうやってそのような深い世界観に達したのですか。それはあなたが持った特定の経験によるものですか、それとも時間をかけて発展させたものですか。
クシニッチ氏:私の見解は、この国家をつくり上げた思想、トーマス・ジェファーソンの人間の自由についての思想、アメリカの超越主義運動、英国のロマン派詩人などの流れと一致しています。私自身はカトリックと関係していますが、それ以上に、あらゆる宗教と関係しています。このすべてがある種の統合をもたらし、人類の和合と人間の可能性についての世界観に導きました。
SI:今日の世界における国連やその様々な機関の役割と重要性に関してどうお考えですか。
クシニッチ氏:大統領として、私は国連を強化し、国際秩序と国際法を維持するあらゆる組織にアメリカを参加させるために働きます。国連は人類の和合にとって非常に強力な器でありましたし、合衆国が、国連が効果的であることを保障するのは非常に重要なことです。残念なことに最近のアメリカは、国際的意思決定における国連と安全保障理事会の役割を貶めるよう試みてきました。イラクにおける戦争は、現在の政権が、国連、安全保障理事会、査察団の仕事によって表明された懸念を無視して、単独行動の道を進むことを決定したことによる破壊的な方法の顕著な例でした。このような政策が偉大な国家の役割に一致するとは思いませんし、人類の和合を促進し確かなものとする努力に一致するとも思いません。合衆国大統領として、私は先制攻撃と単独主義の政策を棚上げして、すべての国家の安全と、とりわけこの国の安全を保障するための協力のための政策をつくり上げます。
SI:国連が世界におけるその可能性を実現するためには、どんな変化が起こる必要があるでしょうか。
クシニッチ氏:私たちは、合衆国に何ができるかを見なければなりません。大統領として、私は国連が合衆国と共同して国際法のあらゆる分野を調整し強化するために働くことを求めます。アメリカは核不拡散条約の主張を掲げることによって道を先導することができます。新たな核兵器の生産を止めることによって、包括的核実験停止条約を制定することによって、核戦争を予期する国家ミサイル防衛計画を棚上げすることによって、兵器拡散から宇宙を保護し、宇宙条約に参加して、宇宙に兵器が存在しないようにし、宇宙の軍事化を求めた「ビジョン20/20」計画の主張を棚上げすることによって、核兵器の廃絶を求めることができます。アメリカは、テロリズムの挑戦に応えることができるよう国際協力を進めることで道を先導することができます。9・11以降、国際社会は国際テロリズムの挑戦に制度的に取り組み、国家と地域の警察組織と協力して働くために世界の資源を組み合わせる野心的な取り組みに対してアメリカと共に参加する用意ができました。残念なことに、アメリカは一人で自分の道を進み、探知活動よりも爆弾を好んでいます。私は、私たちはテロリズムに対する国際協力を通しての国連強化に向けて道を先導できると信じています。
さらに、合衆国はこの国で非常に強力な概念を国際的に促進する必要があります−−法の前の平等な正義です。それを行う最高の方法は、国際刑事裁判所に参加することです。大統領として、私は国際刑事裁判所への合衆国の完全参加に向けて動きます。それに加えて、合衆国が生物兵器条約と化学兵器条約に調印し、小型兵器条約と地雷条約にも参加することを欲します。そして、地球環境保全のために、京都気候変動条約(京都議定書)への参加も求めます。それは私たちが持続可能性に向けて働き始めることを要請しています。これらの分野すべては、国際秩序、国際法、そして国連の強化について何かを訴えています。
SI:私たちの雑誌は『シェア・インターナショナル』といいます。それは、私たちは豊かな人々と貧しい人々の間で世界の食糧と資源をより平等に分かち合うことが必要だと信じているからです。そのことについてあなたはどうお考えですか。そしてもっと一般的に、ここアメリカで、そして世界全体で人々をどうやって貧困から抜け出させることができるでしょうか。
クシニッチ氏:福音書の中で、キリストは人々に挑戦し、社会的意識のための倫理を創造しています。彼はこう言いました。「私が飢えていたとき、あなたは食べさせてくれましたか? 私が宿無しだったとき、あなたは泊めてくれましたか?」続いてこう言いました。「あなたが最も小さな兄弟のためにしたことは何でも、私のためにしてくれたのです」。彼は分かち合いの霊的な原則と、それが私たちの存在に内在する互恵的な事実であるという認識の絶対的な必要を結び付けました。私たちは他の人々を認めることを通して、そして私たちの人生、私たちの持っているものを他の人々と分かち合うことを通して、自分自身の存在を肯定するのです。物質世界を霊化する私たちの能力は、その認識にかかっています。
SI:あなたの幅広い政治的経験から、物質世界に霊的な理想を顕現するための最良の方法は何だと思われますか。
クシニッチ氏:政府の中で私が行うことは、雇用を創出して、人々が自足し、自分自身のための物質的な富を創造できるための機会を与えることです。私はそれを、普遍的な保健医療のアイディアを促進することによって行います。この国の誰もが標準的な質の保健医療を受ける機会を持つようにすることです。私は退職後の保険を促進します。完全に保障された社会保険制度によって、定年後の人々が経済的保障を得ることができるようにするためです。私は教育を促進するために働きます。子供たちが世界についての知識と、自分自身についての知識を発達させる機会を持つことができるようにするためです。私は毎日大きな問題に取り組んでいます。
クリーブランド(オハイオ州)にある私のオフィスは、より小さな問題にも関わっています。しかし、人によってはそれが人生の大きな問題なのです。様々な心配を抱え、サービスを必要とする人々を毎年1,000人援助しています。政府の仕事はマクロな政策の中だけにあるのではありません。それはミクロな政策の中にもあります。人生を肯定したいと願う人々、彼らの人生の環境を尊重してほしいと願う人々、個人の存在と共同体に価値を置く社会に参加したいと願う人々、この国に住むそうした何千万もの人々にサービスを提供するために政府は存在します。私は毎日、一人の人間をどうやって助けるかを考えています。そして私は毎日、全世界をどうやって助けるかを考えています。実際にその二つはお互いに流れ合うものなのです。
さらなる情報は:www.kucinich.us
国際月刊誌 『シェア・インターナショナル』 (SHARE INTERNATIONAL)のトップへ戻る
シェア・インターナショナル誌 最新号: 2006年4月号の記事より
過去シェア・インターナショナル誌に掲載された方々のインタビュー記事の一例
- 前ユニセフ理事長ジェームズ・グラント氏とのインタビュー
- ラビ・バトラ博士へのインタビュー
- 国境なき医師団ジェームズ・オービンスキー氏へのインタビュー
- 元労働党下院議員トニー・ベン氏へのインタビュー
- 元国連大量破壊兵器主任査察官スコット・リッター氏へのインタビュー
- 合衆国下院議員デニス・クシニッチ氏とのインタビュー
- 英ジャーナリスト、グレッグ・パラスト氏へのインタビュー
- 「経済ヒットマンの告白」ジョン・パーキンス氏へのインタビュー