元国連大量破壊兵器主任査察官スコット・リッター氏へのインタビュー
SI誌2003年5月号より
「市民として行動する義務」
聞き手:フェリシティ・エリオット
スコット・リッター氏は1991年から1998年にわたりイラクにおける国連の大量破壊兵器主任査察官であり、ニュースにも度々登場する。リッター氏は共和党員であるが、ブッシュ政権への批判を遠慮なく口にする。オランダ社会党によってオランダに招かれ、氏は一連の講演と会見に応じた。フェリシティ・エリオットがアムステルダムでシェア・インターナショナル誌のために彼にインタビューを行った。
シェア・インターナショナル(SI):確認しておきたいのですが、あなたは愛国的な方ですよね。また、あなたは平和主義者ではなく、正当化できる戦争もあるとよくおっしゃっていたように思うのですが。
スコット・リッター:はい、私はもちろん愛国者ですが、戦争を認めるという点で平和主義者ではありません。私が認める戦争というのは自衛のための戦争、法の枠内に収まる戦争であり、もし他のすべての手段が失敗に終わった場合、そのような戦争は正当化できると思います。
SI:しかし、あなたはブッシュ政権を遠慮なく批判していますが、なぜでしょうか。
リッター:ブッシュ政権は米国を辱めたと思うからです。ブッシュ政権が行ったことは、全く取り柄がありません。私は権謀術数家ではありません。目的を達成するためなら手段を選ばないという姿勢は取りません。間違わないでください。私はサダム・フセインの弁明者ではなく、正当な法の手続きを信じているだけなのです。
世界共同体として共存していくために私たちは法を必要とします。法の支配によって文明が定義されるからです。それ以外の方法でどうやって一緒に暮らし、活動することができるでしょうか。ブッシュ氏は、法の支配から逸脱したと思います。
SI:先制攻撃ドクトリンをどう考えますか。
リッター:複雑ですね。自国にとって脅威だと思えるものであれば何にでも飛びかかっていき、先制攻撃を仕掛けるなんて全くできないことです。この点で、私は米国もしくはブッシュ政権の先制攻撃という考えに疑問を持ちます。その考えが他のすべてに優先する戦略、一国主義的な「国家安全保障戦略」の一部となっているためです。ブッシュ政権の先制攻撃ドクトリンによると、私たち、つまり米国だけが問題を定義する権利を有し、私たちだけが問題を解決する権利を有していることになっています。米国の卓越性を信じているわけではありませんが、非常に強力な国であることは確かです。世界は米国にどう向き合うかを学ばなければなりませんし、私たちアメリカ人も自国にどう向き合うかを学ばなければなりません。権力があれば良いことをたくさん行うこともできますが、絶対的な権力が衰退することは必然であり、米国の権力を制限する最良の方法は、全世界的に受け入れられている法の支配に従うことです。
SI:あなたは最近、講演を数多くこなしていますね。一般大衆は何を知る必要があるとお考えですか。
リッター:「知る」以上のことが必要であると言いたいと思います。一般大衆は「行動」をし始める必要があり、それこそが市民としての義務です! 正直に言って、みんなが「さて、次に何をしようか」と言いながら受身の姿勢に終始することにはうんざりしています。
私たちは目覚めなければなりません。良き市民になることから始める必要があります。良き市民とは、自分のコミュニティーに深く関わり、自分のコミュニティーに精力を注ぐ人のことです。いったん深く関わるようになれば知識が得られます。自分が何の一部であり、何をしているのか、突如として分かるでしょう。答えははっきりしていると思います。それは、私が人に言うべきことではありません。それは「あなた」が求めている知識です。知識を授けてもらおうとして「私」のところに来ないでください! 外に出て、見いだしてください。質問をしてください。良き市民になろうとしてください。あなたが選出した代表者が、あなたの名の下に行っていることに説明責任を持たせてください。プロセスに関わってください。時勢に流されるのではなく、時勢をつくり上げてください。
SI:それでは、民衆は民主的なプロセスにおいて十分な役割を果たしていないとおっしゃっているのですね。
リッター:民主的なプロセスはほとんどの国で全面的に不足しています。私たちは、市民権や民主主義がどういうものなのかを忘れてしまっています。消費者主義の毛布で自分たちをくるみ込んでいる−−つまり、私たちは消費者に成り下がり、自分たちを安楽の繭でくるみ込んでいるのです。相対的な繁栄の道をよたよた歩き続ける限り、耳を塞いでいることはできますが、消費者主義や「アメリカンドリーム」が私たちを限定するようなことを許してはなりません。
SI:あなたが話しておられる最中に思い浮かんだのですが、私たち全員を代表しているはずの国連は最近苦しみを味わいましたね。
リッター:憲法や国連は完璧なものではありません−−いずれも改正される余地があります。その時代の必要に合わせるために憲法や国連を変えていくことができます。それは進化していくプロセスであり、このようなものを私たちは民主主義と呼びます。国連に問題があるとしたら、その問題を避けるのではなく解決していきましょう。
しかし、ブッシュ氏がやってしまったこと、そして現在の情勢に関して恐ろしいことは、ブッシュ氏が対外的にも国内的にも法の支配から大急ぎで逸脱してしまったことです。私はブッシュ政権が−−「国土安全保障」、「愛国者法」と称して−−9月11日の出来事を不当に利用しようとするのではないかと危惧を抱いています。そのようなことをすれば、憲法に真っ向から逆らうことになります。
SI:現在の状況に立ち戻って、幾つかの誤解を片付けることにしましょう。イラク攻撃は石油のためだけではありませんね。同時に、ブッシュ氏の周囲や背後にいる無名の人々の陰謀団についてコメントしていただけますか。また、「新アメリカの世紀プロジェクト」について何かおっしゃっていただけますか。
リッター:もちろんです! 人々はこのことに焦点を当て始めるべき時だと思います。単に石油目当てなのか? 絶対にそうではありません。では、石油も一役買っているのか? 全くその通りです。石油は権力の一部だからです。
SI:この戦争は大量破壊兵器のためではなく、政権交代や解放のためでもないと言えると思いますか。こうしたものがすべて口実として使われたと言えるでしょうか。
リッター:そのとおりです! そうしたものはすべて偽装で、むきだしの侵略こそが真の理由です。これは権力、地球規模の権力の奪取、覇権のために行われています。昨年発表された国家安全保障戦略にこのことが反映されています。その戦略の元になったのは1997年に「新アメリカの世紀プロジェクト(PNAC)」によって提唱されたドクトリンです。PNACは、ディック・チェイニー氏が国防長官であった1992年に、チェイニー氏とポール・ウォルフォウィッツ氏というPNACの2人のメンバーによって起草された当初の戦略にまでさかのぼります。基本的にこのすべては旧ソ連の崩壊と、強力な敵対国と対峙する立場に二度と戻りたくないという米国側の願望から生じました。ですから、私たちが唯一の超大国であり続けることを保証する必要が生じてきます。それが確実に保証されるように、私たちは圧倒的な経済力と軍事力を行使しようとするのです。
SI:そのため、米国の産業界が関係してくるわけですね。
リッター:権力とは何でしょうか。権力とは経済力です。私たちは石油について話をしましたが、石油以上のものが関与しています。メディアをコントロールし、政府に対する圧倒的な影響力を持ち、大統領選挙に際して資金を提供していたのは企業−−企業の力を介した権力エリートたち−−です。ですから、企業も陰謀団の一翼を担っています。民主主義を信じる者として、私はこのことに不快感を覚えます。個人から一握りの企業エリートへの権力の移譲が行われています。アメリカ人が「消費者アイデンティティー」を持ち続け、繁栄の居心地の良さに身を包む限りは、企業エリートと企業エリートに関係する人々が権力を握ることになります。私たちはこの「消費者アイデンティティー」を打破しなければなりません。自分たちの市民権、自分たちの民主主義を支配する力を取り戻す必要があります。
この陰謀団については公言されていない側面もあり、それについてお話ししなければならないと思います。イスラエルは存在する権利を持っていると信じる者として私はこのことを言うのですが、このプロジェクトつまりPNACはシオン主義者の要素を含んでいます。これは言いにくいことです。というのも、何か言うとすぐに反ユダヤ主義だ、反イスラエル主義だとして非難されるからです。しかし私は「大イスラエル」ではなく、国連および法の支配によって定められたイスラエルを信じています。PNACのメンバーの中には、米国の権力の諸様相がイスラエル国家の安全保障と連結していると信じる人々がいます。私が懸念を抱くのはそのためです。
SI:「次はどこの国」だと思いますか。イラク国境にとどまらないと考えますか。
リッター:はい。イラクは世界覇権のためのこの新ドクトリンを実施するに当たっての事例研究にすぎません。「私たちはサダム・フセインを排除する必要がある」と言っていた人々が、今では「ここに軍隊がこれだけいるのだから左を向いてシリアに入る必要がある」と言っています。何のためでしょうか。イスラエルの北境の安全を確保するためです。ですから、イスラエルが攻撃を受けたわけでもないのに、イスラエルの国境の安全を確保するために米国兵士が戦い、死ぬことになります。これはこじつけであり、非常に注意深く監視していく必要があります。
SI:その地域での反響も注視しなくてはなりませんね。
リッター:ええ、現在もそうであるように、私たちは中東全域でアラブ世界やイスラム世界の世論を疎んじ、怒らせる危険を冒しています。
SI:米国は単独でそうすることができるでしょうか。
リッター:はい、帝国の強大な地位を反映して、しばらくは単独で行動できるでしょう。しかし、帝国は消化不良で滅亡するものだということを歴史が示しています。帝国はあまりに多くのものを消費するために滅び去るのです。
SI:最後に平和運動について何かおっしゃっていただけますか。
リッター:米国をやめさせるには、米国の人たちが自国を止める以外に方法がありません。米国は民主主義国としての地位を取り戻して、法の支配を回復させなければなりません。米国の人々は、帝国の市民としてではなく、共和国の、民主主義国の市民として自分たちを再定義しなければなりません。
平和運動にできることは何でしょうか。平和運動によってそのような基準を米国の人々に対して掲げることができます。米国の人々はおそらく、自らを目覚めさせるためにある種の揺さぶりを必要としています。反米デモを行うより、米国の民主主義のために、憲法で支持された原則のためにデモ行進すべきでしょう。米国の前に鏡をかざして、「皆さんは自分たちが説くことを実践していませんよ」と言えばよいと思います。そうすれば、行動を起こし、良き市民になるよう米国の人たちにショックを与えるのに役立つでしょう。
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シェア・インターナショナル誌 最新号: 2006年4月号の記事より
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